ハイブリッド会議とは、会議室に集まるオフライン参加者と、支店・営業所や自宅からWeb会議ツールで接続するオンライン参加者が混在する会議形式です。
コロナ禍をきっかけに急速に普及し、現在では多くの日本企業にとって日常的な会議スタイルとして定着しています。
しかし「定着した」ことと「うまくいっている」ことは別の話です。
音声が聞き取れない、リモート参加者が会話に入れない、機材の接続準備に毎回手間取るなど
慢性的な課題を抱えたまま、なんとなく運用を続けている企業が少なくありません。
ハイブリッド会議を構築・運用する上でのポイントは以下の通りです。
- ハイブリッド会議の最大の課題は「音声品質」
- 部屋の規模に合ったマイク選定
- 既存設備の改修はより慎重に
- AI議事録の精度はAV設備の音声品質で決まる
本記事では、ハイブリッド会議の基本から、最大の課題である「音声品質」の改善方法、会議室の状況に応じた機材選定と構築の進め方、そしてShure・YAMAHA・Biampといった最新ソリューションまで、AV設備の専門家の視点で徹底解説します。
目次
1. ハイブリッド会議のやり方と対面・フルリモートとの違い
2. ハイブリッド会議室の構築
3. ハイブリッド会議の音声を改善する ― 原因と機材選びのポイント
4. ハイブリッド会議を支える最新テクノロジー
5. まとめ
1. ハイブリッド会議のやり方と対面・フルリモートとの違い
ハイブリッド会議を実施するには拠点の会議室に規模や運用にあったAV設備を整備します。
それに加えてリモート環境との「橋渡し」となるWeb会議に接続するためのデバイスも必要です。
その構成は大きく2パターンあり、いずれの構成でも対面やフルリモート会議とは根本的に異なるポイントがあります。
ハイブリッド会議の基本構成
ハイブリッド会議の基本構成2パターン
- メイン拠点の会議室にAV設備があり、リモート参加者がPCから個別に接続する形
- リモート側も会議室からAV設備を使って参加する「拠点間接続」の形
本社と支社をつなぐ定例会議などでは後者が一般的です。
このパターンでは個別のリモート参加者が加わることもしばしばあります。
いずれの構成でも、対面会議やフルリモート会議とは根本的に異なるポイントがあります。
それは「異なる環境同士を橋渡しする」必要があるということです。
つまり、AV設備やWeb会議デバイスをハイブリッド会議に最適なかたちに整えることが重要です。
リモート参加者が取り残されがち
ハイブリッド会議で最もよく見られる問題は、メイン拠点の大きな会議室に多数の参加者が集まっているにもかかわらず、マイク/スピーカーやモニター/カメラがハイブリッド会議向けに整備されていないケースです。
この状態では、リモート参加者にクリアな映像と音声が届きません。
- 誰が発言しているのかわからない
- 会議室の端にいる人の声が聞き取れない
- カメラの画角が悪く会議室の雰囲気をつかめない
結果として、リモート参加者は会話に入るタイミングを失い「聞いているだけ」の傍観者になってしまいます。参加の意味がほぼなくなり、時間を浪費することになります。
2. ハイブリッド会議室の構築
ハイブリッド会議室の構築は既存のAV設備の有無で難易度が大きく変わります。
パターンA:AV設備がない会議室を新規構築する
ゼロから設計するため最新ソリューションを最適な構成で導入しやすいのが利点です。
要件を洗い出し、それに最適な設計・施工を実施します。
- 人数:会議室の大きさに依存しますが、利用人数を把握し必要機器の台数を算出します。
- 配置:机と椅子の配置によって採用機器やシステム設計が変わることがあります。
- 役割:実施される会議の役割によって、コスト重視なのか、運用・品質重視なのかを決定します。
- 頻度:利用頻度によって、上記と同様にコストと品質のバランスを検討します。
パターンB:既存のAV設備をハイブリッド対応に改修する
こちらが最も難易度が高く、専門業者の介在が不可欠なパターンです。その理由は主に3つあります。
- Web会議用インターフェース・ブリッジの追加:Web会議端末(PCやRooms端末)に音声やカメラ映像を受け渡しするデバイスを既存設備にあわせて導入する必要があります。
- マイクの本数・種類:ハイブリッド会議では音声をよりクリアに集音してリモート先に届けることが欠かせません。多くの場合マイク本数不足やハイブリッド会議に適したマイクではないことが多く、再設計が必要になります。
- 表示デバイスの最適化:ハイブリッド会議の肝は参加者と資料を同時かつ大きく表示することです。既存の表示デバイスが大きさと数量の最適化を検討します。
新規構築が「最適解を選ぶ」作業であるのに対し、既存改修は「制約の中で最適解を見つける」という複雑な作業になります。
後者は、ハイブリッド会議構築の経験やノウハウが成功のカギとなります。
3. ハイブリッド会議の音声を改善する ― 原因と機材選びのポイント
ハイブリッド会議における不満の大半は音声に起因します。
映像の品質が多少悪くても会議は成立しますが、音声がしっかり届かなければ会議そのものが成り立たないケースがよくあります。
ここでは、よくある音声トラブルとその原因を整理します。
声が小さくて聞き取れない
これは単純に発言者のマイクからの距離やマイクの集音性能に起因することがほとんどです。
音質を改善するには発言者にマイクを近づける事、本数が足りなければ増やす事が必要です。
マイク・スピーカーが一体型の機種は、メーカーがうたっている範囲や人数の70~80%程度しか実力を発揮しないことが多いので、必然的に会議デスクの端に着席している参加者の声は届きにくくなります。
同時発言時に声が聞き取れない
ZoomやTeamsなどのWeb会議システムにはエコーを防ぐためのエコーキャンセラーが搭載されています。同時発言時(ダブルトーク)にはこのエコーキャンセラーが意図しない働きをしてしまい、声がつぶれたり、揺らいだりして非常に聞き取りにくくなります。
この場合は、AV設備側のエコーキャンセラーとWeb会議システム側のエコーキャンセラーを最適に設定する必要があります。
その他にも、空調音やキーボード打音などのノイズが大きくて声がクリアに聞こえない、交互に会話する際のしゃべりだしの声が潰れるなどの現象が発生することがありますが、いずれもAV設備やWeb会議システムのオーディオプロセッサーの最適化がなされていないことが原因です。
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会議室の規模別・マイクの選び方
音質改善の肝は「部屋の規模と用途に合ったマイクシステムの選定」です。
下記の表は会議室規模・人数ごとのWeb会議向けマイクシステムの選定表です。

ハドルスペース(2〜4名):オールインワンタイプで完結
ヤマハ、Logicool、Jabraなどのマイク・スピーカーやオールインワンビデオバーで完結します。
机上やモニターに設置するばすぐに使用が可能。エコーキャンセラーも内蔵されている機種も多く
特別な音響設計は不要です。
中会議室(6〜12名):シーリングマイク or テーブルトップマイク
この規模から「マイク1台では足りない」問題が顕在化します。
シーリングマイク(天井設置型)
天井からビームフォーミング技術で発話者を自動追尾するため、机上がケーブルレスになり、レイアウト変更にも柔軟に対応できます。Shure MXA920やYamaha ADECIA(RM-CG)が代表的な製品です。
8名くらいまでであればスピーカー一体型のShure MXA902も選択肢のひとつです。
スピーカーを別途設置する必要がなく、コストと運用面でのバランスに優れています。
テーブルトップマイク
グースネック型やバウンダリー型をDSPと組み合わせて使います。
発言者の口元に近いため収音性が高く、役員会議など音質を重視する場面に向いています。
ワイヤレス型のYAMAHA RM-WやShure Microflex Wirelessなどが準備や片付けの手間もかからず便利です。
大会議室(15名〜):ワイヤレスマイク or シーリングマイク複数台
広い空間では、前述のワイヤレスマイクが更に威力を発揮します。
準備や片付けの効率化が図れ、クリアでしっかりとした音声を届けることができます。
また、複数台のシーリングマイクを設置し、DSPで統合制御します。
シーリングマイクのメリットは準備や片付けの手間がほぼゼロの圧倒的な運用性と
会議室に自然に溶け込むデザイン性にあります。
マイクを意識することがないので、相手拠点と自然な会話を実現します。
より広い空間では、天井スピーカーやラインアレイスピーカーで室内全体にクリアな音声を届ける
ボイスリフトや自己拡声の機能も重要になります。
この規模では専門業者による音響設計が不可欠です。
4. ハイブリッド会議を支える最新テクノロジー
音響ソリューション ― Web会議向けマイクとDSPの進化
ハイブリッド会議室の音声品質を左右する中核が、マイクとDSPです。
ここでは主要メーカーの最新ソリューションをご紹介します。
特にシーリングマイク+ボイスリフト機能(自己拡声)の発達で会議室の音響ソリューションは更なる進化を遂げています。
Shure MXA920
Shure第2世代アレイアーキテクチャを採用したシーリングマイクです。
オートマチックカバレッジテクノロジーにより最大9m×9mの範囲を自動でカバーし、設置後の調整工数を大幅に削減します。IntelliMix DSPを内蔵し、エコーキャンセル・ノイズリダクションを本体内で完結。Dante対応で1本のLANケーブルで音声・電源・制御を伝送できるため、施工もシンプルです。
DSPとパワードシーリングスピーカーと組み合せることにより、ボイスリフトと自己拡声にも対応し
より質の高い会議を実現することが可能です。
Yamaha ADECIA
日本メーカーならではのワンストップソリューションが「ADECIA」です。
シーリングアレイマイク(RM-CG)と遠隔会議用プロセッサー(RM-CR)を中心に、LANケーブルを接続するだけで自動音響設定が完了します。
ワイヤレスマイクのラインナップも豊富で、レイアウト変更が多い会議室にも柔軟に対応可能。日本語でのサポート体制も安心材料です。
ファームウェアバージョン3.0からは「自動ボイスリフト設定機能」を搭載。
設計から現地納入に至るまでのワークフローを大幅に効率化するインテリジェントな設定機能で
納入工数の削減に貢献します。
Biamp Parlé プレゼンターリフト
広めの会議室向け音響ソリューションで、自己拡声が必要なプレゼン形式の会議で威力を発揮します。
シーリングマイクが自由に動き回るプレゼンターの声を正確にキャッチし、オンライン・オフラインどちらの会議参加者にもその音声をクリアに届けます。
Web会議プラットフォーム ― AI機能で会議の価値が変わる
AIによる文字起こしや議事録生成機能は、昨今のビジネスシーンにおいて業務効率化の欠かせないツールになりました。
Microsoft Teams Rooms + Copilot
Teams RoomsとCopilotの組み合わせは、インテリジェントスピーカーによる話者識別が最大の特徴です。音声プロファイルと顔認識で会議室内の各参加者を個別に識別し、Copilotが「誰が何を言ったか」を正確に記録。AI議事録とフォローアップタスクを自動生成します。
Microsoft 365の導入率が高い日本企業にとって、既存ライセンスとの親和性は大きな導入メリットです。
Zoom Rooms + AI Companion 3.0
ミーティング要約・アクションアイテム抽出に加え、ボイスレコーダー機能でZoom外の対面会議も文字起こし・要約が可能になりました。Custom AV for Zoom RoomsによりDante等プロAVプロトコルとの連携も拡張され、AVシステムのカスタマイズの自由度が向上しています。
Google Workspace + Meet
Google MeetのAI議事録機能は、Google WorkspaceのBusiness Standard以上で使用可能で専用機材や追加費用なしですぐに使える手軽さが最大の魅力です。
高い文字起こしの精度や要約機能の品質は高く、Googleエコシステムと連携は更なる業務効率化を後押しします。
AI議事録の精度はAV設備で決まる
Teams CopilotもZoom AI Companionも、精度の高い議事録・要約を生成するには「誰が何を言ったか」の正確な音声入力が大前提です。集音能力の低いマイクシステムでは複数話者の分離が困難で、特に日本語は同音異義語が多いため、音声品質が低いと誤認識が頻発します。
シーリングマイクやインテリジェントスピーカーで音声品質を確保してこそ、AIの精度が向上します。つまり「AIを入れる」前に「AIが正しく機能するAV環境」を整備しなければ、効果を最大化することはできません。
5. まとめ
ハイブリッド会議の音質改善や構築のポイントを改めて整理します。
- ハイブリッド会議の最大の課題は「音声品質」
音声品質が悪ければハイブリッド会議は成り立ちません。対面会議のような臨場感が生産性を大きく左右します。 - 部屋の規模に合ったマイク選定
規模や用途にあったマイクの種類と数の最適化が不可欠。 - 既存設備の改修はより慎重に
単純な機器の追加では解決できないことが多く、専門業者に必ず相談しましょう。 - AI議事録の精度はAV設備の音声品質で決まる
AIによる議事録・要約の効果を最大化するには、「誰が何を言ったか」を正確に集音できるAV環境の整備が大前提。
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ハイブリッド会議室の構築は、「どの機器を買うか」ではなく「会議室で何が最適か」から始まります。
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